「私は見るために目を閉じる」これはポール・ゴーギャンが残した有名な言葉です。
ゴーギャンはこの習慣について、手紙に書いています。
「私は目を閉じて、私の前で広がる、定義しにくい無限の空間の中の夢を見ます」
ゴーギャンは人を描くとき、外見ではなく、その人から受けた印象を描くことを重視しました。
つまり、できるだけ人物の内面を表現しようとしたのです。
ゴーギャンは、分類するならば、フィンセント・ファン・ゴッホやポール・セザンヌのような、「後期印象派」の画家です。
わかりやすくいえば、「前期印象派」は、光の多様な変化をとらえて「絶対的な色は存在しない」と主張した画家たち、そして「後期印象派」は「絶対的な形は存在しない」と主張して、その思想に沿って絵を描いた画家たちだということができます。
風景を渦巻きのように曲がりくねる模様で表現した、ゴッホの「星月夜」をイメージすると理解しやすでしょう。
純粋な世界を追求した彼は、子どものように洗練されていない技法を採用したのです。
彼が目を閉じることで見た夢も、子どもの夢のような純粋なものだったのかもしれません。
ゴーギャンのファンの中には、かのキュビズムの代名詞、パブロ・ピカソもいました。
ピカソの絵は「子どもが描いたような絵」と言われることもあるが、これこそゴーギャンから受けた影響です。
先ほどジャック・ドーシーの瞑想の習慣を紹介したが、瞑想をする時間すらとれないという読者は、ゴーギャンの、このたびたび目を閉じる習慣をすすめたいです。
実は、しばらく目を閉じているだけで、脳の中では心理を安定させるα波が発生するといいます。
数秒間目を閉じるだけでも、簡単な瞑想な効果を得られるのです。
たびたび目を閉じる習慣は、スポーツ科学の専門家たちも、メンタルトレーニングの一環としてアスリートに実践させています。
研究によると、たびたび目を閉じる習慣を続けると、アスリートの筋肉や運動能力にも良い影響があるといいます。
たしかに、スポーツ、特に個人競技の国際大会の試合中継を観ていると、競技が始まる前に深呼吸をして、目を閉じているアスリートが多いことに気づきます。
目を閉じる習慣は、画家には想像力を、運動選手には能力の向上をもたらす、科学的に効果が証明された習慣なのです。
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