刺激を与えてくれる友を持つ

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数学に関心がない人でも、「不完全性定理」という言葉は聞いたことがあるでしょう。

何となく不安を覚えさせる響きですが、数理体系が確かなものだと信じたい数学者たちにとってはより深刻な意味を持ちます。

不完全性定理は、どんな数学の論理体系も、完全な真理だとは証明できない、ということを証明したものだからです。

当時の数学界において、もっとも強い影響力を持っていた学者は、ダフィット・ヒルベルトでした。

彼の悲願は、数学全体の完全性と、無矛盾性を完成させることでした。

ヒルベルトはこれを達成するために、「ヒルベルトプロジェクト」を提示し、全世界の数学者を鼓舞しました。

1930年、68歳の彼は、退官にあたっての演説で、自分がいつか必ずこの夢をかなえることを、多くの数学者の前で宣言しました。

「我々は知らなければならない。我々は知るだろう!」ところがその1年後、クルト・ゲーデルという25歳の若き数学者が、次のような事実を証明してしまいました。

1、どんな論理体系も、その中には真実なのかわからない命題が存在する

2、もし、すべての命題の真偽が明らかになったら、その論理体系は破綻する

これは数学界にとって衝撃的な結果でした。

確かな真理があると考えられていた数学の世界にも、真理かどうか判断することができないものが常に存在し、その真偽が判明したら、どんな論理体系も崩れ去ってしまうことが証明されてしまったのです。

さて、不完全性定理を証明したゲーデルはウィーン大学に勤めていたが、ナチスから逃れるために渡米し、プリンストン高等研究所の所長となります。

気難しい性格で知られるゲーデルだったが、そこで親しくなったのが、同僚のアルベルト・アインシュタインです。

当時のアインシュタインは60代であり、さすがに研究活動も低調になっていた時期です。

そんな彼にとって、若いゲーデルの存在は刺激になったらしく、2人は家族のように親密になって、物理学、数学、哲学など多くの分野について討論することが習慣になってました。

アインシュタインは、「私は退社してゲーデルと散歩するために出勤している」とまで言うほどでした。

この習慣はゲーデルにも刺激を与え、1949年にはアインシュタインの「一般相対性理論」について「ゲーデル解」を発表しています。

天才というと孤独な印象があるが、それは自分の知的水準にふさわしい人間が周りにいないだけかもしれません。

ゲーデルにしても、自分にインスピレーションを与える人とは簡単に友だちになれるのだから、わざと孤独になろうとする人は存在しないのです。

天才ですら、人からのインスピレーションを発想の源泉としているのだから、凡人の我々がたったひとりで成せることなど、本当にたかが知れています。

アインシュタインほどではないにしても、自分に刺激を与えてくれる友は人生に不可欠です。

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