スティーブン・スピルバーグは現代を代表する映画ヒットメーカーである。『プライベート・ライアン』『シンドラーのリスト』で2度のアカデミー監督賞に輝いたほか、娯楽性に富んだ超大作も多く手がけています。
実は、そんな彼の大学での専攻は映画とは関係ない、英文学科です。
もとは映画学科に進学しようとしたが、成績が悪くて進路変更をせざるを得なかったのです。
彼が入学したのはカリフォルニア州立大学の英文学科だったが、そこを選択した理由は、隣にユニバーサル・スタジオがあったからです。
学校では映画を勉強することができないから、せめて映画製作の現場をたくさん見ておきたかったのです。
入学後、スピルバーグは念願かなってユニバーサル・スタジオを見学する機会にめぐまれました。
同スタジオは撮影現場を観光客にも公開していたから、見学自体はそう難しいことではありませんでした。
だが、彼は観光客として訪問するだけでは気が済まなかった。勝手に会社の中に入っていって、もっと多くのものを見ようとしました。
厳重なセキュリティをくぐり抜けてウロウロしているうちに、スピルバーグは編集局長のチャック・シルバーズとばったり出会います。
シルバーズはこの若者が勝手に入ってきたことを知ったが、彼の情熱と、彼が作った4本の短編映画の話などをするうちに気に入り、翌日も会社を訪問できるように通行証を発行してくれました。
味をしめたスピルバーグは、翌日から父の書類かばんを持ち、社員のフリをしてユニバーサル・スタジオに出入りするようになりました。
大学を卒業して入社するルートもあったはずだが、とにかく映画が作りたかった彼は、それまで待てなかったのです。
だから毎日ユニバーサル・スタジオに「出勤」すると、編集スタッフや録音エンジニアが働くところを見て、映画製作のイロハを吸収していきました。
誰も使っていない事務室を見つけたので、自分の名札を作ってかけておいたといいます。
通行証の有効期限はとっくに切れていたが、誰もスピルバーグのことを侵入者だとは気づいていませんでした。
このような日々が2年も続いたが、さすがに正体がバレてしまい、セキュリティに追い出されてしまいます。
だが、彼はスタジオに「勤務」する中で、すでに数人の取締役とコネクションを築いており、後に映画を作るようになってから、ユニバーサル・スタジオと組むことができました。
社員のフリをして毎日映画会社に潜り込み映画作りを学んだ、彼の2年にわたる習慣から学べるのは、「情報はできれば直接手に入れる」態度です。
もちろん、下手をすれば犯罪行為だから、そのままマネすることはできないが、情報の中には直接手に入れなければならない種類のものがあり、そんなときは迷わず行動力を発揮する必要があります。
たとえば、漫画が好きで、漫画編集者になりたい人がいるとしましょう。
漫画編集者への道としては、編集者養成講座や専門学校を経由することも考えられるが、これは明らかに周り道です。
漫画家と編集者がどのような打ち合わせをしているのか、印刷所に渡すファイルはどのような形式なのか、こういった実務面の情報は直接経験しなければなかなか手に入りません。
間接的に情報を得ようとするより、出版社にインターンやアルバイトで潜り込むほうが、数倍早く現場の知識が身につくでしょう。
これはあらゆる分野で言えることです。
理論だけでは学ぶことができない知識は、行動で手に入れるしかないのです。
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