投資家ウォーレン・バフェットは、ビル・ゲイツに次ぐ大金持ちとして、一般によく知られています。
幼いころからお金に興味を持っていたバフェットは、6歳にしてコーラを配達するサービスを請け負ってお小遣いを稼いでいました。
そして11歳になると株式投資を始めました。
早くも卓越した投資センスを見せており、学校の先生たちも彼の売買した銘柄を気にしていたといいます。
20代でオマハにオフィスを開いた彼は、現在もずっとそこから動かず株式投資を続けています。
バフェットは朝起きると、車で20分ほどかかるオフィスに出勤します。
会社に到着すると、オフィスで5~6時間は新聞や本、市況関連の情報を読みます。
かなり地味な生活パターンです。
本や新聞であれば、誰でも読んでいます。
だが、彼にはひとつ、凡人とは異なる点があります。
バフェットは、自分にとって重要な情報は暗記してしまう習慣を持っています。
これは幼いころからの日課であり、特に好きなのは数字です。
小学生時代から、オマハの都市人口など、多くの統計資料を暗記していいました。
おかしな習慣ですが、とにかく彼はずっと昔から数字が大好きだったのです。
大学時代には教科書を丸ごと覚えてしまうほどで、投資家となってからも数多くの企業の純利益や売上高などを頭に入れていました。
彼の自伝『スノウボール』には、この習慣こそが自分の成功を決定づけた、としているくだりがあります。
どういうことでしょうか?
大衆が持っているバフェットへのイメージは、巨大企業になる前の有望株を「一本釣り」して、長期投資の末に大金持ちになったというものです。
しかし、実際には、バフェットは膨大な数の銘柄情報を緻密に分析して投資する手法を採っていました。
たとえば株式市場には多くの銘柄が存在するが、その中で100社の情報を分析するとしましましょう。
普通の人なら、銘柄情報を次々に閲覧しているうちに、さっき見た企業の情報など忘れてしまうでしょう。
こうなると投資対象を比較・分析するのは難しいです。
しかしバフェットのように、それを記憶していれば、頭の中でその情報を関連付けて考えることが可能になります。
たとえば、決算書を見ながら、こんな連想ができるようになります。
「この会社は赤字だが対昨年比で赤字が減り、売上は増加した。投資を考慮しよう」
「この会社は今年純利益が急激に増加している。なぜだろう?」
去年のデータを記憶していない人に、こんな思考は生まれないです。
データを引っ張り出してきて、比較することはできるが、いちいちこんなことをしていては時間がいくらあっても足りないです。
結局、記憶をしていない=比較対象を持たない人の目にとって、たいていのデータはただの数字の羅列に過ぎないのです。
これは大きな差です。
昨今、「詰め込み式・暗記中心の勉強は良くない」という意見をよく聞きます。
そして天才は暗記ではなく、直感や論理によってすべての問題を解決してきたと思われがちです。
何かを暗記することが、論理的思考と真逆の位置にあると思い込んでいるのです。
だが、「Fortune」の編集長だったジェフ・コルビンは、著書『才能はどう鍛えるのか?』で、「自分の専門分野について多くの知識を持つ人が、より大きい成果を出す」という研究結果を多数紹介しています。
その理由は、バフェットを例に出したように、多くの知識やデータを記憶していれば、それを利用してより高次元な思考をおこなうことができるからです。
自分が作成したプログラムをすべて暗記したビル・ゲイツや、その日に自分が打ったショットをすべて記憶していたプロゴルファーのジャック・ニクラウスなど、似た事例は数知れません。
「暗記は悪い勉強法だ」という間違った観念に執着せず、自分の仕事と関係のある情報はできる限り記憶するように努力してみれば、仕事力がアップする実感が得られるはずです。
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